あらかき

躁鬱の即席遺書

先生

 僕の尊敬する作家は不勉強ではあるものの何名かいる。タイトルから察するように、芥川龍之介、という文豪もその1人だ。出会いは中学3年生の頃。本当は当時、太宰治を読んでみたかったが、当時の僕には、その作風が理解出来ず挫折した経験がある。(僕の文面を見て察するように、今となっては太宰治は僕の憧れの作家である)そこで、太宰治が生涯憧れた作家の芥川龍之介に興味を持った。元々僕は読書が好きだった。江戸川乱歩や、ロアルト・ダールの作品を好んで読んでいた記憶がある。しかし、中学に入学して、本を読む機会を失ってしまった。それもあり、久々の読者だったのでとてもワクワクした記憶が残っている。

 

 僕が手に取った本は、羅生門であったと記憶している。内容は言うまでもない。衝撃的、というよりも、妙なことに、不思議と僕の頭に馴染んでいった。僕の想像している以上に読み易かった。僕は羅生門に記されている「鼻」と「芋粥」という作品が好きになった。人間のエゴと、それらが生み出す滑稽さは、なんとも痛快で面白かった。なにか、近所の兄貴分が聞かせてくれる身内話に似たものを感じる。僕にとって芥川龍之介の作品は、昔噺の立ち位置であった。また、中学を卒業する手前に、「蜘蛛の糸」を読んだ覚えがある。あれの蜜柑という小説が今でもとても好きだ。話らしい話のない話はあの頃から書いていたと僕は確信した。

 

 そんな芥川龍之介だが、僕は或ることをきっかけに芥川龍之介の印象が変わってしまった。僕も稀に小説を書いてみたりするので、彼の作品をもっと深く読んでみようと考えた。僕は友人にも勧められて河童という小説を買ってみた。前に読んだ羅生門と、全く雰囲気が違う、それには別人の芥川龍之介がいた。なんともいえない不気味な雰囲気。ダークな雰囲気といえばそれまでだが、どうにもならぬ狂気が垣間見えた。僕は河童に収録されていた「或る阿呆の一生」や「歯車」、「蜃気楼」などといった作品に莫大な衝撃を受けた。それまで読んだ小説には無かった全く新しい風が僕の中に吹き込んだ。僕は芥川龍之介の事を、先生と呼びたくなった。(僕は心の中で芥川龍之介の事を先生、と呼んでいる。)

 

 また、期間が少し空いて、一昨年の冬休み頃、僕は暇を持て余し、図書館へ足を運んだ。ふと先生の作品を、読みたくなったので、方向を回れ左して進んでいった。途中、ヤングアダルトコーナーに、あの頃読んでいた羅生門を見つけた。僕はなんだか嬉しくなって本を手に取り文を目で追った。小説を書くようになって気付いた事がある。先生の小説は、無駄な文が無いのだ。普通、小説を書くにあたっては、どうしても無駄な文を入れなければ話に厚みが出なかったり、作品の内容がとても短いものになってしまう。しかし、先生の作品は無駄がないのにあそこまで見事に書け、尚且つ、短いではあるものの、我々読者を満足させるには十分過ぎる量なのだ。やはり先生は、偉大な文豪なのだ。

 

 先生の作品を読んだことのない方も居ると思う。勿体無いと私は思うので、おこがましく感じるが、オススメの小説を、適当にピックアップして紹介する。

  1. 羅生門
  2. 芋粥
  3. 蜘蛛の糸
  4. 魔術
  5. 蜜柑
  6. 犬と笛
  7. 河童
  8. 蜃気楼
  9. 或阿呆の一生
  10. 歯車

 他にも作品はあるが、僕も不勉強なので、三度と読み返さねばならない。共に勉学に励もうではないか。

 

※追記

芥川のタイトルで展開しようと思ったけど、勢い余ってタイトルを先生に変えてしまってた。こりゃ察することも出来んわな